Reise nach Verdheim

ヴェルデンハイム紀行

そこは、夕暮れが
永遠に続く国だった。

PROLOGUE

旅の始まりは、いつも曖昧だ。

気がつけば私は、針葉樹の匂いに包まれた薄暮の森を歩いていた。
空は茜色と紫紺の境目で揺らめき、太陽は沈みもせず、昇りもしない。
ここがヴェルデンハイム——永遠の黄昏の国だと、誰かが囁いた。

しかしその声の主を、私は見つけることができなかった。

静寂の森
01

Stillwald

静寂の森

音が、消えていく。

自分の足音さえも、数歩先で霧に溶けてしまう。
この森では、叫んでも木々に吸い込まれ、
囁きだけが遠くまで届くのだという。

私は試しに、名前を呼んでみた。
誰の名前だったか、もう思い出せない。

02

Ambersee

琥珀の湖

湖面が、燃えていた。

いや、燃えているように見えただけだ。
沈まない夕日が水面に溶け、
古代の琥珀のような色に染まっている。

地元の人々は、この湖には記憶が沈んでいると言う。
忘れたいことも、忘れたくないことも、すべて。

琥珀の湖
星見の塔
03

Sternwarte

星見の塔

かつて、ここで星を読む者たちがいた。

今は苔に覆われた廃墟だが、
夜になるとオーロラが塔を包み込む。
まるで、まだ誰かが見上げているかのように。

私は階段を上った。
最上階には、古い望遠鏡が残されていた。
レンズの向こうに何が見えるのか、
覗く勇気は、まだない。

04

Nebelmarkt

霧の市場

朝霧が最も濃い時刻にだけ、市場は現れる。

売られているのは、夢の欠片、
忘れられた言葉、誰かの思い出。
通貨は存在しない。
欲しいものがあれば、代わりに何かを手放す。

私は何を差し出したのか、もう覚えていない。

霧の市場
王の森
05

Königswald

王の森

この国には、最後の王がいたという。

王は森の奥深くで眠りにつき、
国もまた、ゆっくりと眠りに落ちていった。
それが、永遠の黄昏の始まりだった。

森の中心には、苔むした玉座がある。
誰もそこには座らない。
座れば、この国の夢が終わってしまうから。

GALLERY

旅の記録

TRAVELER'S NOTE

旅人の手記より

「この国では、時間は円を描いている。
始まりと終わりは同じ場所にある。」

——無名の旅人の手記より

「私は帰り道を探していた。
しかしこの国には、帰る場所などなかった。
ここが、すでに帰る場所だったのだ。」

——無名の旅人の手記より

「夢を見ているのか、現実なのか。
その問いに、もはや意味はない。
ここでは、すべてが等しく真実だから。」

——無名の旅人の手記より

EPILOGUE

旅を終えて

私はいつ、この国を離れたのだろう。

気がつけば、日常の中にいた。
しかし時折、夕暮れの空を見上げると、
あの永遠の黄昏を思い出す。

ヴェルデンハイムは、まだそこにある。
夕日が沈まない国で、
静寂の森が音を吸い込み、
琥珀の湖が記憶を沈め、
最後の王が眠り続けている。

もしあなたも、その場所を見つけたなら——
どうか、教えてほしい。
私はまだ、帰り道を探している。